FAQ

faq

二国間クレジット制度 (JCM)に関するFAQ

※本解説は、OECCが日本政府による公開資料「二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism (JCM))の最新動向」に基づき独自に作成したものです。

手続きについて

Q1
JCMのプロジェクト登録・クレジットの発行に関する手続きをどのように行うのか教えて下さい。 NEW
A1

適用可能な既存のJCM方法論が存在しない場合には、まず、「方法論開発手続」を行う必要があります。これら手続の際に参照する文書類は、JCMウェブサイト(英文)で公開されています。

「方法論開発手続」フロー図

(パートナー国とのさらなる検討・協議により変更の可能性あり)

「方法論開発手続」フロー図

I. 方法論開発手続について

「方法論開発手続」には、
提案方法論の提出⇒事務局による完全性確認⇒パブリックインプット⇒提案方法論の承認
のプロセスがあります。まず、プロジェクト参加者は、提案方法論を提出することが求められます。 [プロジェクト参加者が用意・提出するもの]
  • 提案方法論用紙
  • 提案方法論スプレッドシート用紙
これらの用紙を準備し、合同委員会の事務局に提出します。合同委員会の事務局の連絡先(提出先)は、JCMウェブサイト(英文)の国別ページに公開されています。
提案方法論の提出後、合同委員会の事務局が完全性確認を実施し(7日間以内)、その結果がプロジェクト参加者に通知されます。その後、パブリックインプット(15日間)を経て、合同委員会による検討が実施され(通常60日以内(最大90日まで延長可能))、検討結果がプロジェクト参加者に通知されます。

II. プロジェクト登録・クレジット発行について

JCM方法論の承認を経た後、
PDDの作成⇒妥当性確認⇒プロジェクト登録⇒モニタリング⇒検証⇒クレジットの発行
のプロセスがあります。このうち、プロジェクト参加者には、PDDの作成、登録、モニタリング・検証、クレジットの発行に関する書類の提出が求められます。

「JCMプロジェクトサイクル手続」フロー図

(パートナー国とのさらなる検討・協議により変更の可能性あり)

「JCMプロジェクトサイクル手続」フロー図

「JCMプロジェクトサイクル手続」フロー図

※妥当性確認と検証については、同時又は別々に実施可能であり、
さらに、同一のTPE(第三者機関)が妥当性確認及び検証を実施することが可能です。

※JCMクレジットを取得するには、クレジット配分先の国において保有口座を開設する必要があり、口座開設はクレジット発行までに行う必要があります。

プロジェクト参加者が用意・提出するもの

PDDの作成
  • プロジェクト計画書用紙
  • モニタリングスプレッドシート
  • 連絡方法宣誓書用紙
モニタリング・検証
  • モニタリング報告書用紙
プロジェクト登録
  • 登録申請用紙
クレジットの発行
  • クレジット発行申請用紙

※作成の様式は、JCMウェブサイト(英文)の国別ページに公開

Q2
JCMの方法論開発手続及びプロジェクト登録・クレジット発行手続においてどのような費用が発生するのでしょうか? NEW
A2
現在のところ、JCMの方法論開発手続においては手続き上の費用の支払いはありませんが、検討している事業に適用できる方法論がない場合は新規方法論の開発費用が必要となります。また、プロジェクトサイクル手続においては、TPE(第三者機関)が実施する妥当性確認及び検証について、通常プロジェクトのタイプや規模等に応じた費用の支払いが必要となります。なお、JCMでは、CDMにおけるSOP(適応のための課税的措置)やその他登録申請のための手数料などは発生しません。また、政府支援事業に関しては、通常かかる方法論開発や妥当性確認及び検証費用への支援があります。
  • ※合同委員会によって指定されたTPEについては、その機関名や連絡先等の情報がJCMウェブサイト(英文)に公開されます。
Q3
JCMではプロジェクトの登録申請から実際の登録までにかかる期間はどの程度ですか?
A3
具体的な期間はプロジェクトによって異なると考えられますが、JCMでは簡易で実用的な制度を目指すとされています。なお、JCMプロジェクトの申請から登録までに要する平均日数は2018年10月1日時点で約70日となっています。
Q4
JCMを活用して排出削減プロジェクトを行うためには、まず方法論の開発が必要でしょうか?
A4
プロジェクトを実施してから、実態に合った方法論を開発して、JCMプロジェクトとして登録することは可能です。ただし、合同委員会によって方法論が承認され、また合同委員会によってJCMプロジェクトとしての登録が認められることが必要です。

適格性要件について

Q5
適格性要件を確認したいと思います。どこにそれが掲載されているのでしょうか?
A5
適格性要件は、方法論のなかに記載箇所があり、当該方法論を適用した提案プロジェクトがJCMプロジェクトとして適格であること(提案プロジェクトの妥当性確認及び登録の評価の基礎)、また、当該方法論が提案プロジェクトに適応可能であることを判断するための要件となります。合同委員会で承認することが決定された方法論は、JCMウェブサイトに掲載されます。
Q6
ポジティブ・リストと適格性要件のチェックリストとの違いを教えて下さい。
A6
JCMの承認方法論はリスト化され公開されます。プロジェクト参加者は、JCMプロジェクトを実施する際に、自らのプロジェクトに適用可能な承認方法論を活用することができます。この承認方法論のリストがJCMにおける一種のポジティブ・リストと言えます。
一方、適格性要件のチェックリストとはJCM方法論毎に決定される要件のリストであり、方法論を当該プロジェクトに適用するためには、リスト上の全ての適格性要件が満たされることが求められます。
Q7
JCMにおける適格性要件とはどのような意味でしょうか。また、具体的に方法論にどのように適用されているのでしょうか。また、JCMはどのように追加的な排出削減を達成するのでしょうか。
A7
JCMにおける適格性要件は、チェックリストのように、何点かの要件(通常5つ程度)に合致しているかどうかの判断ができます。これらの要件は各方法論の中で、客観的かつ判断が容易な形で設定されています。また、JCMを通して追加的な排出削減を達成するために、環境省は、JCM支援事業のもとで新規のプロジェクトの実施を促進しています。

MRV・方法論について

Q8
JCM方法論開発手続において、CDMの方法論を活用することはできるのでしょうか?
A8
場合によっては、CDMの方法論を参考にすることは可能と考えられますが、方法論提案者は、「提案方法論開発ガイドライン」に基づいて、「提案方法論用紙の作成」及び「提案方法論スプレッドシート用紙の作成」等、JCMの方法論開発の準備を別途行う必要があります。
Q9
方法論開発にあたって、プロジェクト参加者はどのような支援を受けることができるのでしょうか?
A9
環境省、経済産業省、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)による実現可能性調査等の事業を活用することができます。ただし、これらの事業の実施は政府予算の成立状況によります。なお、平成25年度から実施されている環境省のJCM設備補助事業の例では、方法論開発に際して専門コンサルタント等を活用することも可能となっています。その場合、事業実施者は方法論開発に係る参考情報等の提供に協力することが必要ですが、自ら方法論を開発する必要はありません。
Q10
MRV(測定・報告・検証)は、どのように行うのでしょうか?
A10
プロジェクト参加者は、方法論毎に提供されるモニタリングスプレッドシート(「モニタリング計画シート」「モニタリング体制シート」「モニタリング報告シート」で構成)に基づきモニタリング計画を作成します。その後、プロジェクト参加者は自らで作成したモニタリング計画に基づいて、モニタリングを実施し、「モニタリング報告シート」に結果を記入の上、必要に応じて根拠資料と共にTPE(第三者機関)に提出します。JCMにおいては、「モニタリング計画シート」と「モニタリング報告シート」は対の計算シートとなっており、いずれも適用する承認方法論によって提供されます。プロジェクト参加者は、計算シートに示されている項目について、必要に応じて測定を行います。項目によっては、あらかじめデフォルト値が設定されています(もしくは選択可能)。提出されたモニタリング報告シートについて、TPEは「妥当性確認・検証ガイドライン」に基づき検証を行い、その結果をプロジェクト参加者に通知します。
Q11
JCMの方法論は、事業者が作成するに際して複雑なものになっているのでしょうか?
A11
JCMの方法論は簡易なものとなっており、具体的には、モニタリング負担を軽減するためのデフォルト値の活用や、計算式の作成負担を軽減するためのスプレッドシートの活用等により、事業者のPDD作成及び第三者機関の妥当性確認・検証のための作業負担が軽減されています。こうした方法論の作成に際して、デフォルト値設定やスプレッドシート開発のための調査や作業が必要になりますが、例えばCDMの方法論の作成と比較して負担が大きいかどうかは一概には言えません。なお、CDMの方法論は数十ページとなっていることが多いですが、これまでに承認されたJCMの方法論では数ページ程度となっています。
Q12
ある国で承認された方法論を他の国でも活用することはできるのでしょうか?
A12
JCMでは各国の国情に応じて、使いやすい方法論を作成することを目指しており、方法論は各国ごとの合同委員会にて承認されます。これは世界一律の方法論作成を目指して汎用性を高めようとすると、かえって複雑になったり、全世界共通のデフォルト値を設定するために過度に保守的な計算となってしまうことを防ぐためです。したがって、ある国の合同委員会で承認された方法論が、他の国で自動的に活用できるわけではありません。ただしある国で既に提案され、承認された方法論の考え方をベースに、各国の状況に合わせて適宜修正を加えることにより、方法論開発の負担を軽減するとともに、全世界共通のデフォルト値の設定に必要となる署名国以外を含めた大規模な調査を避けることが可能と考えられます。例えば、モルディブで採択された太陽光発電に係る方法論は、パラオで承認された方法論を基に作成されています。
Q13
既に他の事業者によって提案され、承認された方法論を、同じ国において別の事業者が活用することは可能でしょうか?
A13
方法論適用のための適格性条件を満たせば、同じ方法論を活用することは可能です。
Q14
実施事業における排出削減量はどのように計算されるでしょうか? NEW
A14
排出削減量は、プロジェクト排出量とリファレンス排出量の差として算出されます。プロジェクト排出量とは、設備が導入された場合の排出量です。リファレンス排出量とは、排出削減行動を実施しなかった場合の排出量を保守的に設定した値となります。JCMでは、保守的に設定されたリファレンス排出量と比較した削減をクレジット化することによりネット削減が実現されています。同時にJCMではこうしたネット削減を実現するに際して、例えば方法論で保守的なデフォルト値を設定すること等により、事業者のモニタリングやリファレンス排出量特定のための負担、第三者機関による検証の負担等を軽減するよう工夫されています。なお、ネット削減量とは、成り行き(BaU)排出量からの削減をクレジットとするCDMにおけるクレジットの計算方法とは異なり、それよりも少ない量をクレジットとする考え方です。これは、BaU排出量からの削減をクレジットとして発行する場合、結局、クレジット活用により実際にはその分の温室効果ガスが排出されるため、世界全体として削減にならない(これは単なるオフセットと呼ばれます)ことを踏まえた考え方です。

「ネット削減」図

(出展:https://www.iges.or.jp/jp/pub/jcm-methodology-guidebook/ja)

クレジットについて

Q15
発行されたクレジットの配分はどのように決まるのでしょうか?
A15

JCMでは日本側(日本政府及び日本のプロジェクト参加者)が温室効果ガスの排出削減又は吸収に貢献することが必要であり、その貢献に応じて日本側がJCMクレジットを獲得することになります。

実際の配分量については、JCMプロジェクトごとに排出削減・吸収に対する貢献を踏まえて、日本及びパートナー国のプロジェクト参加者間で相談のうえ決定し、「クレジット発行申請用紙」にその割合について記載の上、合同委員会(JC)に申請を行います。JCで決定されたクレジット量は、当該申請に基づいて、各口座に発行されます。

例えば、環境省の実施する設備補助事業においては、原則として発行するクレジットの1/2以上を日本政府に配分することになっています。残りのクレジット配分については、プロジェクト実施への貢献を勘案して、パートナー国政府、日本企業、パートナー国企業間で決定されることとなります。

尚、国によっては、クレジット配分の方針を定めているケースもあります。JCM実施国の情報はこちらをご覧ください。

Q16
JCMクレジットの取引は、いつ、どのようにして行われるのでしょうか?
A16

クレジットの取引はJCM登録簿を通じて行われます。日本国内ではクレジットの取引が可能となっており、手続き等詳細についてはJCM登録簿ウェブサイトをご参照下さい。海外を拠点とする企業等がクレジットを取引するには、日本のJCM登録簿に口座を開設する必要があります。JCMクレジットは日本政府の温室効果ガス(GHG)削減目標の達成に活用される他、事業者においてはGHG算定・報告・公表制度における調整後排出量の調整や自社の排出量をオフセットするカーボン・オフセット等へ活用することができます。
尚、日本政府は発行されたJCMクレジットの買い取りは行っていません。

Q17
日本国内でJCMクレジットを購入する方法を教えてください。
A17

クレジットを自ら取得するためには、JCM登録簿に口座を開設する必要があります。JCMプロジェクト参加者に限らず、法人(内国法人・外国法人)は日本政府が設置したJCM登録簿に口座を開設可能です。JCM登録簿に開設された各法人保有口座間でJCMクレジットの移転を行うことができます。口座開設費用は無料で、開設に要する日数は目安として2週間程度です。口座開設等に関する手続きや、口座保有者、各口座のクレジットに関する情報はJCM登録簿ウェブサイトをご覧ください。

Q18
JCMクレジットの価格水準が分かる資料はありますか? NEW
A18
現在、JCMクレジットの取得は政府による資金支援を受けた事業が中心であり、特にクレジットの価格水準を示す統計はありません。なおクレジットの取引は、販売を希望するクレジット保有者及び購入希望者による相対取引となります。

その他

Q19
JCMはいつまで続くことが想定されますか? NEW
A19
2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みとして、2015年にパリ協定が採択されました。日本はパリ協定に沿った2030年迄の削減目標を記載したNDCを2020年3月にUNFCCCへ提出しています。また、JCMを通じた環境インフラの海外展開を一層強力に推進するための「環境省 脱炭素インフライニシアティブ」を発表(令和3年6月15日)し、2030年度までに官民連携でJCMプロジェクトの想定温室効果ガス外出削減量累計1億t-CO2程度を目指すこととしています。
Q20
JCMではダブルカウントの防止が必要ですか?
A20
JCMでは、二重登録や二重発行について防止するための具体的な取組が導入されています(登録時のプロジェクト情報の位置情報等詳細を提出することや参加者による宣誓、第三者機関による確認等)。また、途上国で実現した排出削減・吸収量が先進国で活用された場合に、当該途上国においてその削減・吸収量をどのように扱うかについては、CDM等の国際的なクレジット制度全体で対処していくことが必要であり、具体的な防止策については、UNFCCCの下で検討が行われています。
Q21
日本政府による資金支援(JCM設備補助等)を受けずに、JCMプロジェクトとして登録することは可能でしょうか?
A21
原則として可能です。ただし、JCMプロジェクトとしての登録に際して日本側の貢献を示し、パートナー国政府から承認を得る必要があります。